「クロス屋は歴史が浅いからダメなんだよ~!」
なんて言われた事があります。
歴史が浅いから同業者同士の繋がりが希薄で情報交換ができない。
技術の向上や継承ができてない。
単価の値崩れなんかもその辺りに根があるんじゃないでしょうか。
以前このコラムでも触れましたが、洋風建築に壁紙を貼り出したのは“表具師”さんたちです。
こちらは襖、屏風、掛け軸の世界ですから、伝統と歴史の世界です。
江戸東京たてもの園の施工とか見るにつけ、当時の職人さんの気概とプライドを感じます。
“美しく貼って長持ちさせる”
この2点に対する強烈な誇りですね。
ところが、高度経済成長期、バブル期、その後の不況を経て状況が変わってきます。
「クロスって簡単に儲かるからやろうぜ!」
そんな安易な新規参入組が、“クロス屋さん”と“経師屋さん”の世界を乖離させていきます。
結果、今のクロス屋さんの世界では“早くて沢山貼って稼ぐ人”が上手なクロス屋さんとされています。
泉内装が儲からないわけですね~(^.^;
「もし私が人より遠くを見ているとしたら、それは先人の肩の上に立っているからだ。」
アイザック・ニュートンさんのお言葉です。
自分が師匠から継承した技術は壁紙草創期の“表具師”の技術に立脚しています。
量産品のビニクロを貼る時にさえその技術は生かされています。
そして、去年お寺の金箔施工という大仕事をこなせたのも“表具師”の三上先生のご指導があってこそです。
こんなんですけど経師の世界では知る人ぞ知る偉い先生です(^.^;
それこそバブルに浮かれず不景気にブレずに師匠や先生を通して引き継がれたわけですから、その重みを深く感じます。
なんで無節操なネットでの技術の流出は避けたい…、しかるにつけ業界の現状のテイタラク。
スイマセン、最近他社のクレームの火消しやらダメ下地の補修なんて仕事が続いたものですから…(^.^;
「技術に対して敬意を払って謙虚に学びなさい。」
師匠のお言葉です。
スピード施工、簡易施工が求められる現場もたしかにあるんですが…、あまりに蔓延してしまうと壁紙施工そのものに対する信頼性が損なわれることになりかねません。
「クロスは長持ちしないから、ペンキや塗り壁のほうが…。」
そんな声をたまに聞くこともあります。
そして正しい技術の継承は建築業界全体の近々な課題でもあります。
現場に行くとどの職種もお年寄りばかりで、若者がいてもみんな海外の方たちばかりなんです。
日本の匠はどうなる!
そんなジレンマを抱えている今日此の頃の親方なのであります。
というわけで、相模原でクロスの貼替えの際は「向上心のある人には無償で教えている」泉内装でお願いします(^.^;
次回は糊メーカー「ウォールボンド工業」のお話しでおつき合い下さい。